アルバム

前述しましたが、マイケルの最も売れたアルバムは「スリラー」で、この1億500万枚の売上げという記録は未だ塗り替えられていません。「スリラー」の前に出した「オフ・ザ・ウォール」は、マイケルの成人後初のソロアルバムですが、このアルバムでマイケルの才能は開花しました。周囲の反対を押し切ってクインシー・ジョーンズをプロデューサーとして起用し、自らもプロデュースに関わりクインシーと共に制作に励みました。マイケルというとあまり作曲するというイメージが一般的に無いですが、マイケルの全曲の8割はマイケルの自作だそうです。アルバム「オフ・ザ・ウォール」で初の自作曲「今夜はドント・ストップ」を披露していますが、ダンサブルでパーカッションを鳴らして飛び跳ねるようなリズムを生み出していて、マイケルの非凡な才能がよく分かる一曲です。

マイケルは黒人音楽を基点にスタートしましたが、「オフ・ザ・ウォール」ではソウル音楽にポップスとしての要素も取り入れて、それが一般に通用したアルバムだと思います。その後に出した「スリラー」は「オフ・ザ・ウォール」よりもよりポップス、ロック色が出ているアルバムで、黒人白人問わずあらゆるポップスファンに受け入れられたというのが、アルバムがあれほど売れた原因でしょう。一度聴いてみると分かると思いますが、「オフ・ザ・ウォール」も「スリラー」も、今聴いても全く古臭くなく、逆に新鮮に聴こえるのは不思議です。今でもファンを魅了し続けるのがよく分かるアルバムです。

「スリラー」の後、「バッド」、「デンジャラス」、「ヒストリー」、そして最後に「インヴィジブル」と、それほど多くのアルバムを出しているわけではありませんが、聴いてみると聴いたことのある馴染みの曲ばかりで、よくまあこんなにヒットを生み出せるなと感心してしまいます。捨て曲がありません。アルバム毎に、何か新しいことを志すマイケルの姿勢が伝わってきます。

カテゴリー: MJ

ショートフィルムの魅力

80年代に始まった、アーティスト達のプロモーションビデオを頻繁に流すMTVは、当初黒人の音楽は流さないという暗黙のルールがあったそうで、白人のアーティストの作品が主体だったそうですが、そのMTVに風穴を開け、MTVの時代を引っ張り、常にパイオニアを目指したのがマイケルでした。ダンスやパフォーマンスを特徴としていた彼にとって、そのパフォーマンス映像を作ることこそもっとも自分の魅力を引き出す最大の方法と確信し、このMTVというメディアに取り組んでいきました。その最初の頂点を捉えた作品が、今までのプロモーションビデオとは違う、映画監督を起用し、映画のようなストーリー性をもった「スリラー」、ショートフィルムです。

MTVで「スリラー」が流されることにより、今まで黒人音楽に触れてこなかった白人達をも魅了し、黒人と白人の壁を越えたと言われています。ショートフィルム「スリラー」によってマイケルに対する一般民衆の認知度は格段に上がり、アルバム「スリラー」は世界で1億500万枚売上げという驚異的なものになりました。この「スリラー」がきっかけとなり、その後のMTVにおけるプロモーションビデオの質が変化し、マイケルの「スリラー」のようなストーリー性のあるものが主流となりました。

マイケルの映像でよく出てくるのが、群舞といわれる、沢山のダンサー達の先頭にマイケルが立ち、集団ダンスをするというものがありますが、このスタイルもプロモーションビデオではマイケルが最初と言われています。代表されるのが、「スリラー」、「今夜はビート・イット」、「スムーズ・クリミナル」、「バッド」、「リメンバー・ザ・タイム」です。ダンスが揃っているので見ていて気持ちがいいですし、ダンサーの中でもやはりマイケルのダンスに目を奪われます。ショートフィルムの中でも私が一番気に入っているのが「スムーズ・クリミナル」で、群舞の魅力と、白のスーツとハットに身を包んだマイケルの成熟したダンスが見られるものとなっています。

カテゴリー: MJ

誰も真似できないダンス

ユーチューブ等でマイケルの映像を探っていた中で一番私の目を釘付けにしたのが、モータウン25周年記念ショーの際マイケルが「ビリー・ジーン」を歌いながら初めてムーンウォークを披露した映像です。私はそれまで「BAD」のマイケルくらいしか知らず、「ビリー・ジーン」の曲さえ知りませんでした。「ビリー・ジーン」でのマイケルはまだ若く、黒いスパンコールの上着を着、白いスパンコール付きの手袋と靴下を着用して、神にとり憑かれたように歌いながらダンスをしていました。そのダンスは、誰も真似できない、マイケルにしかできない、マイケルにしか似合わないダンスでした。「ビリー・ジーン」といえばマイケルの代名詞と言われるほどマイケルの代表曲になっています。でもそのモータウン25周年記念ショーの際着ていたスパンコールの上着は母親からの借り物らしいというエピソードは、天才マイケルの可愛らしい一面が垣間見れるような話です。

マイケルのダンスの才能は幼少の時からで、一度教わるとすぐ自分のものにして習得したそうです。あるエピソードがあって、映画「ウィズ」の出演で振付師から振り付けを教わっていて、一度で振り付けを習得してしまうマイケルに対し他の共演者が腹を立てていることを共演したダイアナ・ロスから教えてもらうまでマイケル本人が気付かなかった、という話があります。マイケルがゾンビ達と踊る、有名な「スリラー」という曲がありますが、あのゾンビ達はオーディションに受かった、長年修行を積んだプロのダンサーなのに、マイケルは彼らに引けを取らない、むしろプロの彼らよりも上手いのではと思わせるほどのダンスを披露しています。

その他に「スムーズ・クリミナル」や「デンジャラス」、「ユー・ロック・マイ・ワールド」など、マイケルにしかできないダンスを映像で見ることができます。マイケルが「自分がパイオニアになりたいんだ」と言っているのを聞いたことがありますが、まさにそのとおりになっているのが映像で見るとよく分かると思います。

カテゴリー: MJ

卓越した歌唱力

マイケル・ジャクソンは幼少の頃から卓越した歌唱力で聴衆を魅了しました。ジャクソン5時代で歌唱力がよくわかるのが「ベン」という曲で、まだ変声期前の可愛らしい、伸びのある声でした。マイケルには兄弟が10人(その内一人は生まれてすぐ死亡)もいました。マイケルの父親が作ったジャクソン5の前身のバンドでは、ヴォーカルは最初マイケルの兄であるジャーメインでしたが、マイケルが加わってからはやはりマイケルがヴォーカルになりました。マイケルのヴォーカルは兄弟の中でも群を抜いていて、マイケルがグループのヴォーカルになるのは必然だったでしょう。ジャーメインがもしヴォーカルだったら、きっとジャクソン5も存在しなかっただろうと思います。他の兄弟が歌っている曲もいくつかありますが、兄弟がいくら多くても、その中から天才は何人も出ないんだなと実感してしまいます。

声変わりを経たマイケルの歌声は、幼少期の美声とはまた別の、みずみずしく中性的で、誰にも似つかない、マイケルにしか出せない声に変わっていました。私は幼少期の声も可愛らしくて好きですが、変声期後の声の方がよりマイケルらしくて好きです。マイケルが21歳のときに発表したソロアルバム「オフ・ザ・ウォール」でその才能が全面的に開花します。アルバムの中の「今夜はドント・ストップ」や「ロック・ウィズ・ユー」等は、マイケルの若くてみずみずしい美声が魅力的です。周囲の反対を押し切って、そのアルバムのプロデューサーとしてクインシー・ジョーンズを迎えたことも、マイケルの才能が開花する上で重要なポイントでした。クインシーは、マイケルとは親子ほどの年齢差がありましたが、マイケルの特徴ある声にぴったり合う楽曲の製作能力に非常に長けていました。天才は自分の才能を最大限発揮するための手段を知っているのです。

カテゴリー: MJ

もうこんな天才は現れない

2009年6月25日は私にとって忘れられない日です。マイケル・ジャクソンが死亡したというその日のニュースは衝撃的でした。当時私はマイケルの一ファンではありましたが、今ほどではありませんでした。80年代ヒットした「BAD」が好きだったくらいで、マイケルがどれほど偉大な人物かということを知りませんでした。3月のロンドンでの記者会見でマイケルがロンドンでコンサートを行うと発表された時、久々のコンサートだし、日本だったら是非行くのにな・・と思っていた矢先のことで、かなりショックでした。小中学校から慣れ親しんだ、誰でも知っているマイケルが死んでしまった事に、そんなに大ファンでもない私が動揺してしまい、心にぽっかり穴が開いたみたいになってしまいました。その穴を埋めるかのように、マイケルの死がきっかけとなって、時間さえあればネットや雑誌、本等で色々と調べるようになりました。調べていくうちに、マイケル・ジャクソンとは、類まれな才能の持ち主だったことがわかってきました。

マイケルはわずか10歳の頃のジャクソン5時代から享年50歳までずっと第一線で活躍してきました。裁判沙汰等で多少人気が落ちた時期もあったでしょうが、それでもデビューして40年が過ぎても、ロンドンのコンサートのチケットが発売後5時間で完売するようなアーティストが他にいるでしょうか。飽きやすい観衆を40年近くも魅了し続けるのは、普通なら至難の業でしょう。マイケルが全盛期だった80年代は多種多様なアイドル、アーティストが世に出ていました。今その人達の曲を聴いてみると、ああ、80年代ってこんな感じだった、と、時代を感じさせる曲ばかりでなんだか古臭い感じが否めません。それにその時代活躍していた人達のほとんどはもう「過去の人」の扱いになってしまっています。でもマイケルの曲は、今聴いても全く古臭くなく、むしろ新鮮に聴こえるから不思議です。

天才マイケルを超えるには、幼少の頃からスターとなり、長きにわたってファンを魅了し続けなければなりません。今のところそんな人物は見当たりません。今後もそんな人は現れないでしょう。

カテゴリー: MJ