ショートフィルムの魅力

80年代に始まった、アーティスト達のプロモーションビデオを頻繁に流すMTVは、当初黒人の音楽は流さないという暗黙のルールがあったそうで、白人のアーティストの作品が主体だったそうですが、そのMTVに風穴を開け、MTVの時代を引っ張り、常にパイオニアを目指したのがマイケルでした。ダンスやパフォーマンスを特徴としていた彼にとって、そのパフォーマンス映像を作ることこそもっとも自分の魅力を引き出す最大の方法と確信し、このMTVというメディアに取り組んでいきました。その最初の頂点を捉えた作品が、今までのプロモーションビデオとは違う、映画監督を起用し、映画のようなストーリー性をもった「スリラー」、ショートフィルムです。

MTVで「スリラー」が流されることにより、今まで黒人音楽に触れてこなかった白人達をも魅了し、黒人と白人の壁を越えたと言われています。ショートフィルム「スリラー」によってマイケルに対する一般民衆の認知度は格段に上がり、アルバム「スリラー」は世界で1億500万枚売上げという驚異的なものになりました。この「スリラー」がきっかけとなり、その後のMTVにおけるプロモーションビデオの質が変化し、マイケルの「スリラー」のようなストーリー性のあるものが主流となりました。

マイケルの映像でよく出てくるのが、群舞といわれる、沢山のダンサー達の先頭にマイケルが立ち、集団ダンスをするというものがありますが、このスタイルもプロモーションビデオではマイケルが最初と言われています。代表されるのが、「スリラー」、「今夜はビート・イット」、「スムーズ・クリミナル」、「バッド」、「リメンバー・ザ・タイム」です。ダンスが揃っているので見ていて気持ちがいいですし、ダンサーの中でもやはりマイケルのダンスに目を奪われます。ショートフィルムの中でも私が一番気に入っているのが「スムーズ・クリミナル」で、群舞の魅力と、白のスーツとハットに身を包んだマイケルの成熟したダンスが見られるものとなっています。